新聞購読者にとっての「新聞折込」の価値は?

81.1%。これ、何の数字だと思いますか。
答えは、普段良く行く小売店で買い物をする際に「折込チラシ」を参考にしている新聞購読者の割合。新聞購読者を対象に当社が実施した『日々の買い物の参考メディアに関するアンケート(2021年11月実施)』の調査結果です。
たまに行く小売店での買い物の参考情報として「折込チラシ」を選んだ割合は49.9%でした。次点は「店舗やメーカーのウェブサイト」で、普段良く行く小売店が26.9%、たまに行く小売店が30.0%と大きく水を空ける結果となっています。新聞購読率の低下で、かつてほどのリーチはなくなったものの、依然として新聞購読者の重要な情報源であることがわかります。

コロナ禍では三密回避のため、新聞折込休止の動きも

感染症の拡大による緊急事態宣言発出時には、店舗での三密を回避するとの理由で複数の小売店が新聞折込を一時休止しました。これだけでも、新聞折込が店舗集客に大きな役割を果たしていることを十分に意味しています。
店頭に置くチラシの数を増やし、来店客にのみ売り出し商品の情報を提供する店舗も多く見られました。

新聞折込が来店に及ぼす影響 その1(当社アンケート調査結果から)

当社が新聞購読者を対象に実施した別の調査『日ごろの買い物行動に関するアンケート(2021年5月実施)』では、折込チラシが入らなくなったことでお店に行かなくなった、あるいは足が遠のいた経験があるかを聞いたところ、54.9%の新聞購読者が「経験がある」と回答。職業別では主婦(夫)の割合が最も多く、61.6%が「経験がある」と回答しました。

新聞折込が来店に及ぼす影響 その2(人流データ分析から)

別の視点として、スマートフォンの位置情報による人流データから、新聞折込が集客に与える影響を探ってみました。
調査には、株式会社unerryの「ショッパーみえーる」というサービスを使用しました。GPS、ビーコン等で収集した⽉間300億件超の人流ビッグデータのAI解析により、全国約4.4万店舗の小売の来店者数・属性・頻度・商圏などがわかります。

1ヶ月にわたる新聞折込休止。その影響は?

分析の対象としたのは、千葉県に店舗を構えるA店です。駅近の好立地ですが、1km圏内に5店、1km圏外に3店の競合店があります。定期的に新聞折込を実施していますが、緊急事態宣言が発出された2021年5月は約1ヶ月間にわたりチラシ配布を休止しました。

赤い星印がA店、黒い星印が競合店です。地図上の同心円は、店舗から半径1km、2km、3kmを表しています。

新聞折込休止前の4月と比較したところ、5月は店舗から遠いエリアからの来店がなくなり、商圏が明らかに狭くなっていることがわかります。

総世帯数に対する来店客数の割合を町丁目ごとに色分け表示し、分布を表したものです。割合の高い町丁目ほど、色が濃くなっています。

また、4月と5月の来店人数の差分を見ると、とくに足元商圏で来店客数が少なくなっています。

町丁目別の来店客数の差分(5月~4月)を色分け表示したものです。暖色系の町丁目では来店客数が増加、寒色系の町丁目では来店客数が減少を表しています。

継続して新聞折込を実施していた競合店との違い

近隣の競合店についても同様に見てみます。
分析するのは、A店からは3kmと離れているものの、売場面積の大きいディスカウントストアB店です。4月と5月で分布状況に大きな違いは見られません。

一方で、4月と5月の来店人数の差分では、先ほどのA店の足元商圏からの来店が増加していることがわかります。

同様に、競合店をもう1店見てみます。A店と同じく線路の南側に位置し、距離にして300メートルほどしか離れていないスーパーC店です。B店同様、4月と5月で分布状況に大きな違いは見られませんでした。

4月と5月の来店人数の差分では、A店の足元商圏からの来店が増加しています。

B店、C店ともに、緊急事態宣言下の5月も継続的に新聞折込を実施しており、4月までA店を利用していた顧客の一部がB店、C店に流出した可能性が考えられます。もちろん、コロナ禍によるテレワークの普及により、通勤や通学で駅を利用する機会が減少、生活圏の郊外シフトが進んだことによる影響とも考えられますが、A店と同じチェーンストアの他店舗でもとくに周辺の新聞購読率が高い店舗では同様に来店客の減少幅が大きい傾向であったことから、一定の相関があるといえます。

定期的に来店客の動向を確認し、フレキシブルな対応を

新聞購読者の折込への依存度は高く、貴重な情報源となっていることは先の調査からも明白です。人流データ分析からも、新聞折込の休止が来店に影響を及ぼしている実態が見えました。
緊急事態宣言下において不用意に密を招くような集客施策や広告表現は避けるべきですが、例えば、下記のような形で定期的に情報を提供し、離反を防ぐ方法が考えられます。

  • チラシの広告期間を長くして、頻度を減らす
  • 足元商圏に限定してポスティングする
  • チラシ以外にもLINEやアプリ、メルマガなど、顧客との接点を作る
  • 価格以外のコンテンツでコミュニケーションを図る
  • プッシュ型ではなくプル型の施策としてホームページにチラシ情報を掲載する

また、レジ通過客数の増減だけでは、何が影響しているのかが見えづらいものです。定期的に来店客の居住地データを分析し、商圏や町丁目ごとの分布に変化がないかを把握することで、状況に応じた販促の打ち手が見えてきます。

当社では、2020年5月以降、朝日新聞購読者を対象として定期的にアンケート調査を実施。コロナ禍において、日ごろ接触しているメディアや、広告による購買行動の変化に関するデータを収集・分析しています。ご紹介した内容以外にも、販促計画の参考となる情報が満載です。是非、ご活用ください。

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